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【野菜にんじん専門店】
〒869-1101
熊本県
菊池郡菊陽町津久礼521-9
TEL:096-213-5278
FAX:096-213-5289 |
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にんじん緑葉について |
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ニンジンの原産地は中央アジアで、せり科の植物です。日本には江戸時代後期にヨーロッパから長崎に渡来したニンジンと、ヨーロッパからアメリカを経由して、日本に渡来したニンジンがあり、この2種類のニンジンが現在、日本で栽培されているニンジンの主流になりました。 |
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ほとんど捨てられていたニンジンの葉 |
北海道には、行者ニンニク(アイヌネギ)と呼ばれる野菜があります。この野菜は、ジンギスカン鍋(ヒツジの肉の焼き肉料理)に入れて食べると、特においしいので有名です。
しかし、この北海道の名物にも、難点が一つあります。食べた後に強烈な臭いにおいが、
口から漂ってくるのです。行者ニンニクはニンニクと同じユリ科の植物で、強い悪臭がありますが、そのにおいはニンニクより数倍も臭いのです。行者ニンニクを作る農家の人にとって、これは悩みの種です。もっと多くの人に行者ニンニクを食べてもらうには、このにおいをなんとかしなければなりません。そこで、北海道名寄市で和光農場という農場を経営する佐久間和夫さんが、悪臭退治の方法としてニンジンの葉を利用することを思いつきました。
ニンジンはセリ科の植物ですが、もともとセリ科植物にはにおいを消す働きがあることが知られていました。しかし、ニンジンの葉はめったに食べられることがないので、農家が根から切り離すと、そのまま廃棄されてしまうことがほとんどでした。これではもったいないと、佐久間さんはニンジンの葉で乾燥粉末を作り、それを消臭剤として用いてはどうかと考えたそうです。実際、この乾燥粉末を作って飲んでみると、口臭が消えるばかりか、便の臭いもなくなり、おならも臭くなくなってしまうとのことでした。
こうした効果は科学的にも証明できるのだろうか・・・佐久間さんは、私たちの研究室にニンジンの葉の消臭効果の判定を依頼してきました。
そこで、私たちの行った実験の結果からお話しましょう。私たちは、三角フラスコにさまざまな濃度の悪臭物質を入れ、そこにニンジンの葉の乾燥粉末2グラムをガーゼで包んだものをつるしました。同時に、もう一方の三角フラスコには、ニンジンの葉の乾燥粉末なしで悪臭物質を入れました。そして、この両方のフラスコの中の空気をガスクロマトグラフというガスの成分を調べる機器で分析してみました。
すると、ニンジンの葉の乾燥粉末をつるした三角フラスコでは、尿臭(成分はアンモニア。以下同様)、魚臭(トリメチルアミン)、ニンニク臭(ジアリルジスフィルド)、タマネギ臭(ジプロピルジスフィルド)など、においの成分が明らかに少なく、ニンジンの葉の粉末による消臭効果が確認されました。
また、腸内で異常発酵が起こるとインドール、スカトールなどの窒素化合物が生じ、便やおならを臭くしますが、こうした窒素化合物のにおいも、ニンジンの葉の乾燥粉末で効果的にとれることもわかりました。これらの実験結果から、ニンジンの葉に消臭効果があることは間違いないでしょう。
私たちは、ニンジンの葉の消臭効果のしくみを2つ考えています。1つは、ニンジンの葉の中に、低分子(分子量が小さい)の消臭物質があり、それがにおいの成分と化学反応を起こして、複合体を作って、においを消してしまうのではないか、ということです。
もう1つは、ある高分子(分子量の大きい)のニンジンの葉の成分が、においの成分を包み込んでしまうために、においがなくなるのではないかということです。おそらく、この2つが協力し合って、ニンジンの葉の強い消臭作用が生まれているのだと考えられます。すでに、ニンジンの葉の消臭効果を利用することにより、口臭を解消した、体臭を抑えた、人工肛門をつけたときの便臭が少なくなった(人工肛門の便臭については、悩む人が多いだけに、利用者は大変感謝しているようです)など、実際に用いている人たちからもその効果が報告され、証明されています。 |
抗酸化物質を多く含むニンジンの葉 |
もう1つ強調しておきたいのは、ニンジンの葉の効果は、単に消臭作用にとどまるものではないということです。実は、腸内の悪玉細菌により発生するアンモニア、インドール、スカトールといった悪臭のもとになる有害物質が、体にいろいろな悪さをしているのです。吹き出物ができるというのもその1つですが、ガンを促進させるという働きがあることも指南されています。
したがって、ニンジンの葉を利用すると、便のにおいやおならから臭みが取れてくるということは、ガン予防を含めて、体の健康を保つうえで非常に意味のあることなのです、ニンジンの葉の粉末を長く使いつづけている人たちから、顔色がよくなった、肌がきれいになった、アトピー性皮膚炎がよくなった、つわりがらくになった、水虫が治ったなど、さまざまな体験談が寄せられていると聞きますが、これもそうしたことと大いに関係があるでしょう。
ところで、ニンジンは、主に根の部分を食べるわけですが、その葉の成分にも根に負けないくらいのビタミンやミネラルが豊富に含まれています。しかも、いま話題の活性酸素をやっつける抗酸化物質は、根の部分より、むしろ葉の部分に多いという熊本大学の前田浩教授の報告もあります。
現在、ガンなどの成人病や老化の究極の犯人は、活性酸素という反応性の強い酸素分子ではないかと考えられえるなってきました。活性酸素は不安定で、攻撃性が強く、人間の体内でさまざまな化学作用を引き起こし、細胞を傷つけ、それが老化やガン化にもつながっていくのです。活性酸素は、さまざまなものから作られます。紫外線もその1つです。
そのため、葉の部分は年中紫外線にさらされているわけなので、それに対抗するために抗酸化物質がもともとたくさん含まれているのです。もし、葉の部分に抗酸化物質が少なければ、活性酸素によって葉の細胞が壊され、植物は成長することができなくなります。
また、フラボノイド(カロチノイドと同じに、植物の花や果実、野菜に含まれている色素集団)のうち、ルテオリンの発ガンを抑える作用がマウスの実験で確認されていますが、このルテオリンもまた、ニンジンの葉の部分に多く含まれているのです。にんじんの葉は硬かったり味が劣ったりするので、多くは利用されずに捨てられていますが、しだいにその価値が認められ、愛用する人が増えてきました。
すでに販売されているニンジンの葉の乾燥粉末についても、これを飲むだけではなく、料理に使っている人もかなりいます。例えば、乾燥粉末を天ぷらの衣に少し混ぜて天ぷらを作ると、パリッとしておいしいし、にんじんの葉の香りがほんのりと漂って上品にできます。もし、にんじんの葉が手に入るようでしたら、それを自分なりに料理するのもおもしろいでしょう。例えば、乾燥粉末と同様に、みじん切りにしたにんじんの葉を天ぷらの衣に混ぜると、サクッとした歯ごたえで、風味もいいものです。シュンギクと同じように、にんじんの葉をそのまま天ぷらにしてみるのも、試してみる価値があります。そのほか、葉の軟らかい部分をおひたしにしたり、湯がいた後、野菜いためにするのもいいでしょう。 |
月刊誌「わかさ」1995年1月号 北海道東海大学教授 西村弘行 |
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